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TOWNY 茅ヶ崎版 ホームへ > MY LIFE > 「春になると思いだす」

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雑誌バイザシーにて「+湘南SPICE」を連載中の
技拓株式会社、白鳥ゆり子社長のエッセイ。
スローライフの楽しみ方は必見。

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TOWNY MYLIFEプロフィール

本物の湘南スタイルを提唱する注文住宅 技拓株式会社 代表取締役。主に、家づくりのソフト面となるライフスタイルの提案を担当。心が豊かになる暮らし方、湘南での楽しみ方をコラムやイベントを通して紹介している。ブログはこちら

vol.
079

「春になると思いだす」

あれから5年も経つのかと、いま改めてびっくりしている。そう、私がメジロのヒナを育て、巣立たせたのは2014年のこと。
あの野鳥との濃密な時間は、本当に大変だったが、私の人生の中で自然との関わりを、もっとも意識した時期だったように思う。

実はここに、一つの物語が隠れている。以前もちらりとそのことに触れているが、メジロが我が家にやってくるその1か月前に、幼馴染みが他界した。1年の余命宣告を受けたと連絡を受けた、そのわずか2週間足らずで、この世を去ってしまった彼女。私に会いたいと連絡をしてきた彼女に、仕事で多忙だった時期が重なった。まずはすぐに会いに行けばよかったのに、きちんと多くの時間を作りたいと欲張ったあまり、会うことなくあっけなくこの世を去ってしまった。ましてや、意識が無くなる直前の電話は、取ることさえできなかった。そうして、彼女は私の前から永遠に姿を消してしまった。自分の不甲斐なさに苦しんだ。私は、まるでその罪滅ぼしかのように、メジロの命を救いたい、無事に山に帰してやりたいと、3か月間野鳥の世話に没頭した。

今年も庭には、あの子が大好きだったみかんを置いてやっている。メジロもやってくる。ひときわ大きな声で鳴く、あの子の声が聞こえないかと、そっと耳を澄ます日々。まだちゃんと生きているだろうかと、メジロの声がするたびに、あの子と彼女を思い続けた5年間。

今年も春がやってきた。彼女の誕生日もやってきた。そして彼女の死を思う。それからメジロたちが賑わい、新しい生命が誕生する。春というのは、生き物のサイクルを五感で感じる季節であり、いろいろな想いが巡り淡くて切ない季節でもある。でもエネルギーに満ち溢れたこの時期が、やっぱり私は好きだ。